雁と亀という昔話がある。こんな話である。
昔、ある池に1匹の亀が住んでいた。ところが、日照りで池の水がなくなり、死に絶えようとしていた。
そこで、亀は雁に頼んで、別の池に運んでもらうことにした。お互いに絶対にしゃべらないという約束のもと、亀が木の枝を咥え、その枝を雁が咥えて飛び立った。
しかし、ぶらさがった姿がおかしいと人々から笑われ、どなって亀は落ちて甲羅をわってしまう。
今昔物語にも同じような話がある。雁が鶴になっており、口を開けた理由も少し違う。
亀、まだ見ぬ景色を見て、感に堪えずして、「ここはどこぞ」という。鶴も「ここかい」と言って口を開き、亀落ちて身命を失いけり。
(「亀、鶴の教えを信ぜずして地に落ち甲を破れる語 第24」)
昔話は「信なき亀は甲を破る」という教えでもあるが、今昔物語ではおしゃべり癖のある人は命を落とすよ、口・意・身を謹んで悪をしないという仏の法を守りなさいと言っており、付け加えて世の人は「信なき亀は甲を破る」の喩えとして語り伝えていると紹介している。
私は今昔物語の解釈のほうがよくわかる。亀と鶴(雁)との約束は信頼を裏切ったというより、うっかりのおしゃべり癖を戒めたと考えたほうがすっきりするが、どうだろう。