明治27年(1894年)12月中旬、広島県三次郡三次町に大きな鷲が現れ、小児を連れ去る事件が起きた。
大鷲は小児を掴んだまま高宮郡の方向へ飛び去り、そのまま行方不明となった。
空けて明治28年(1895年)の1月7日、今度は高田郡粟屋村に現れた大鷲は、 犬3匹を次々に襲って食べ、民家では赤ん坊を連れ去ろうとして村人達を恐怖のどん底に陥れた。
10日になると大鷲は同郡岩脇村に現れ、犬を襲っていた所を村人によってついに捕えられた。 大鷲は六、七貫目(22.5~26.25kg)、翼長は二間(約3.6m)あまりもあったという。
鷲に子供をさらわれたという話は、子供のころ、よく聞いた。ほんとかどうか、こんな話がある。
皇極天皇の時代、但馬の国七美の郡でのことである、中庭で遊んでいた女の子を鷲がさらって、東の方へ飛び去ってしまった。ひたすらその子のために供養の法事を営んで、冥福を祈って7年、孝徳天皇の時代に父親が丹波の国加佐の郡に出かけ、はからずもある家に泊まった。
その家の召使の子が水を汲みに井戸へ出かけて行ったので、父親も足を洗おうとついていった。村の娘たちも井戸に集まり水を汲もうとしていたが、召使の女の子のつるべをとろうとし、女の子がとられまいとすると、娘たちが一斉にはやしたてた。
「お前は鷲の食い残し」
帰って、父親が訳を尋ねると、主人は、
「ある年の某月某日、私が鷲を捕まえるために木に登っていると、鷲が赤子をさらって西のほうから飛んできて、巣の中に入れて雛の餌にしようとしていた。赤子がおびえなき、その声に雛がおびえてついばもうとはしなかった。私は巣からこの子を下ろして育てたのです」
父親は驚いて、娘がさらわれたことを話した。日にちも状況もぴったりと合う。娘は父親のもとに帰ることができた。天が哀れんでくれたものに違いない。
今昔物語 第26の1話
霊異記 上第9