割り箸は使い捨てではなく、使って捨てた間伐材を再利用したものだと言う意見もあるが、最近は中国から安い割り箸が輸入されるようになって、間伐材を再利用してきた日本の割り箸は少なくなってきたようだ。
中国からの割り箸の価格が上がってきて、と言って、日本の割り箸業界はすでに壊滅状態になっており、この際、環境ブームにのっかって、塗りばしを復活させている店が多い。ワタミは平成19年7月から全店舗でプラスティック製の箸に切り替え、八剣伝や世界のやまちゃんも割り箸を止めている。スガキヤも全店舗で割り箸を止め、例の熊手のようなスプーンを改良して大ブレークしている。ミニストップの「5円の木づかい運動」のように、国産間伐材で作った割り箸を5円で売っている所もある。
2006年ブログ参照
2007年ブログ参照
最近の話でなく、昔から、飛騨高山産の1500円もする檜の箸を使っている店があると聞いて、その話を書いてくれとある環境紙に頼まれて取材に行った。(これは、その下書きである。)
味噌煮込みうどんの老舗、山本屋総本家である。似た店で山本屋本店というのがあるが、もともとは大正14年の山本屋にさかのぼる。一般の家庭で、味噌汁の中にうどんを入れて食べていたのを商品化したということだ。昭和24年に総本家として再出発し、26年に本店が出来る。本店を作ったのは山本屋の使用人だった人らしいが、宣伝が上手かったようで、今では山本屋本店の方が盛んである。
ナディアパークの近くに本家(本店のことをこう言います)があって、そこで、専務の小笠原さんが待っていてくれた。
創業のいきさつや檜の箸を使い出した先代の思いを聞いた後、早速、味噌煮込みうどんを注文した。かしわ入りを頼んだ。
何度も使って真っ黒けになった信楽焼きの土鍋に色濃い味噌が煮立っている。岡崎産八丁味噌と名古屋産白味噌の秘伝の味だ。蓋だけが焦げていない。これは後からかぶせるだけの取り皿で、蓋には穴も空いていない。
箸は、1cm四方もあるような角箸。何度も使われていて、先が(太さが一様で、どちらが先とは決まっていないが)丸くなっている。テーブルの傍らに50センチもあろうかという竹筒が置いてあって、節を境目に一味と七味が入っている。
塗り箸でなく、すっぴんの天然木は、何年も使えて、うどんがすべらない。それが、角箸を使い出した動機なのだそうだが、確かにしっかりとつかめて、うどんが落ちて汁が飛び散るのを防ぐ。蓋を手前に置いて、持ち上げたうどんを平行に移動すれば、汁は飛び散らないということだが、今は紙ナプキンをつけるようになっている。
硬いうどんの歯ごたえと濃い味噌味がたまらない。ざっくりと大きく切った白いネギと名古屋コーチンのかしわもよくあう。白い部分の多いネギは高いそうだ。
残念な事に、衛生上の理由(エイズが流行った頃)や珍しがって持って行かれてしまうというような事もあって、10年ほど前に割り箸に変えざるをえなくなってしまったというだ。でも、申し出れば、角箸を持ってきてくれるし、割り箸も国産で、薬品を使わないで手洗いに徹しているそうだ。もう一度角箸を復活してほしいという声もあって、箸を作ってくれそうな所を探しているそうだが、値段が折り合わなくて中々むつかしそうだ。
値段よりも国産(地産)、自然にこだわり、「うどんも好きだが、近所のラーメンもおいしい」という商売っ気のない、なんともおおらかな専務さんだ。お店の人もなんとなくおっとりしてみえる。
味噌煮込みを食べる時は、是非、本店(ここしか角箸は置いてないそうです)へ来て、角箸を注文して、ゆっくり、まったり、大きな箸で硬いうどんをしっかりつかんで食べてみてください。
<追記>
三遊亭円丈が「雁道~名古屋禁断の書」(1987年発行)に山本屋の話を書いている。