人気ブログランキング | 話題のタグを見る

棺一基 大道寺将司全句集

 大道寺将司というのは、東アジア反日武装戦線”狼”部隊のメンバーで、お召し列車爆破未遂事件及び三菱重工業爆破を含む3件の連続企業爆破事件を起こした男だ。
 1987年死刑が確定するが、テロを後悔していない。

 あかのまま死囚励ますデモの声
 過激派のままにてよろしちちろ虫
                 (1997年)
 痩せ骨にこころざしあり初明り
 日脚伸ぶ生きる意欲の涌き出づる
                 (1998年)

 しかし、それは意地のようなものでもあるし、反省もあるようにもみえるが

 意地だけで五十の夏を迎へけり
 革命の夢破れたり遠花火
 死者たちに如何にして詫ぶ赤とんぼ
 反骨に徹し自適の枯葎
                 (1998年)

 反戦の志は持ち続けているようでもある。

 日の丸に尿放てよ蚤虱
 革命をなほ夢想する水の秋
                 (1999年)
 土性骨なほ定まらず髪洗ふ
 狼や見果てぬ夢を追ひ続け
                 (2000年)
 「VNAROUD!」と口にしてみる夕蛙(2002年)
 凍て返る地に反戦歌甦れ
 ででむしも夢なかりせば生かめやも
                 (2005年) 
 欠けたるは佐倉宗吾か羽蟻群る
 梟の声をゲバラと思ひけり
 枯野ゆく胸にひとつの灯を点し
                 (2008年)

 草萌えや死の告知めく病舎入り
                 (2010年、この年癌の告知をされる)
 地図持たぬ死の道ゆきやあかのまま(2011年)

 最後に題名の棺一基は次の句からの引用である。

 棺一基四顧茫々と霞みけり(2007年)
by kimagurebito | 2012-09-02 22:54 | Comments(0)


<< 尖閣諸島を買う石原知事は非都民 歌集「小さな抵抗」(渡部良三) >>